失われた4月

ここ数ヶ月で、世の中はすっかり変わってしまいました。

日本だけではなくて世界中が。

こんなことってあるのだろうか。

 

東京は、3月後半から週末2回の外出自粛を経て、4月8日には緊急事態宣言へ。

最低限の外出の他は、原則家で過ごさなければなりません。

東京都の累積感染者数は4千人を遥かに超えました。

5月4日には緊急事態宣言のさらなる延長が決定。

 

コンサートやお芝居をバンバンやっていた年末までとは、全く別の世界になってしまった・・・。

会場が満席のお客様であふれていたのが懐かしい。

本当に無防備に、私たちは、舞台を、音楽を、楽しむことができていたのです。

もう二度と、あんなことは無いのかも。

 

コロナ以前とコロナ以降で、少なくとも舞台芸術の世界は歴史が変わってしまった、と思います。

オンラインで出来ることもあるかもしれないし、これからは模索していかなければならないのだけれど、私はやはり生の音楽を伝えたいし、生の音楽を聴きたい。

 

4月と5月に入っていた何本かの本番は、全て中止(または延期)となりました。

特に、念願のタイトルロールを歌う予定だった『トスカ』の中止は残念でしたが、練習場所が使えなくなったことや、緊急事態宣言が出されたことを考えると、中止で良かった。

延期してもいつ沈静化するかは予測できない。私たちがやるような小さな会場でのオペラは、沈静化してもすぐ出来るとは限らないからです。

 

今は、清潔で安全な毎日が送れること、食事と睡眠が適切に取れること、で精一杯。

音楽活動どころではないです。

 

そういえば、ここ1ヶ月以上、全く歌っていない。

音楽が無いと生きていけない、歌っていないと生きていけない、とずっと思ってきたけれど、そうでもなかった。

人間は意外とどうにでもなるのです。

普通に生きてはいける。

でも、それで果たして良いのだろうか。

自分はいったい何者で、何のために生きているのだろう。

 

新型コロナウイルスのせいで、大変な世の中になってしまったけれど、短期間で本当に多くのことを学び、考えさせられました。

 

当たり前に思ってきたことが、実は有難いことであったことも。